強迫性障害という疾患を知っているでしょうか。映画やドラマの中でも個性的なキャラクターとして描かれることも少なくありません。しかし大々的に有名な病名ではないため、身近にその存在がいたとしても「変わった人だな」で終わらせてしまう人も多いはずです。強迫性障害は、不合理だったり無意味な行為や考えを自分の意思にかかわらず繰り返してしまったりする精神疾患です。強迫観念によって脅迫行為を行ってしまいます。家の鍵を閉めたか不安で家に戻って確認する、他人が触った電車のつり革を触れない、といったことは普通の人でもあることですが、この病気の場合はそれがもっと極端になり一日の大半をその行為に費やしてしまいます。また全人口の1〜2%は強迫性障害と推測されている割に、自覚症状がないことが多く自分や周辺が困っていることもあるかもしれません。代表的な例をあげると、不潔・疾病恐怖・洗浄強迫はいわゆる潔癖症です。触ったものにはウイルスやばい菌がついていて自分が汚れてしまったと感じて何度も手を洗ったり、お風呂に入ったりしてしまいます。手で触る恐怖がある場合、掃除をすることにも抵抗を覚えるため、部屋はかえって不衛生であったりします。縁起恐怖・数唱恐怖は特定の数字や行為を縁起が悪いと言って避けたり、順番を固く守ったりします。4は縁起が悪いと避けすぎて外に出るのも怖くなってしまう人や、ジンクスにこだわり過ぎて日常生活に支障をきたしたりします。不完全恐怖はものの順序や配列が本人にとって正しく並んでいないといられないものです。物事を始めるのにも特定の順番でなければならず、少しでも違うと最初からやり直したりします。他にも捨てられずため込みゴミ屋敷になってしまう保存恐怖というものもあります。このように強迫性障害はわりと身近な疾患です。しっかりと理解し、付き合い方を考えていく必要があります。
強迫性障害は病気だからと言って移るものではありません。しかし広く知られていない病疾患だからこそ差別的な目で見られてしまうこともあります。そして誰がなってもおかしくない病です。しっかりと理解を深めましょう。原因としては、長い間心理的要因とされてきました。しかし最近では脳の機能障害ということもわかってきました。脳の特定部位の機能障害や、セロトニンのバランスの崩れが大きく関わってきていると言われています。それに加わり日常生活のストレスや死別やPTSDなども起因として大きく関わっているので無視することはできません。しかしきちんと病院に行って治療をすればよくなる疾患です。自分が強迫性障害ではないかと気付いた本人や、周囲の人も「変な人」とひとくくりにしたり、大したことはないと放っておいたりはしないようにしましょう。現在治療としては、薬物療法と精神療法の両方をもって治していきます。体の病気のように完治というものではなく、日常生活に支障をきたさない程度までおさめることを目的とします。薬物療法はセロトニンの異常を調節するために服用するものです。精神療法は認知行動療法を用います。不安や不快感から繰り返してしまう強迫行為を行わないように原因を軽減していきます。一般的なものとして暴露反応妨害法というものがあります。あえて不安になるような状況を作り、「強迫行為を行わなくても大丈夫」と思えるように徐々に改善に向けていきます。時間のかかる治療ではありますが、根気よく付き合って行けば普通の日常生活がおくれるようになるのです。自分に合った病院で自分に合った治療をすることが大切です。